ながい長い時を重ねて太古は幾度か生まれかわり、海とともに生きてきました。
生活物資や人々を運ぶ『かけ橋』として、それはカタチあるものだけではなくもっと深く大きな見えないもの、そこに込められた『息吹』や『想い』を静かにその懐に包み込むように運んできました。
太古の航跡は、そんな歴史の中に綴じられた人々のさまざまな『生命』を残していきます。
『母なる海』に流れゆく時に豊かでやさしい記憶を残すのです。

そして太古は、波間に漂う遠い昔の記憶を呼び戻す『時の語り部』。懐かしくもあたたかい母の子守唄にも似て。
海はふくよかな『時』を満ちたたえ、波のゆらめきはやわらかな絹布のように人を包みます。
あたかも海を走る『ゆりかご』のように包まれた人にやさしい夢を見せてくれる。

太古が生きている『時』は、単に航海の時間だけでなく連綿と続く人々の『いとなみ』やその中にある『息吹』や『想い』に触れる『時』。
そして『母なる海』に抱かれながら遠い記憶に心馳せる『いのちの時』。
だから果てしなく人の胸に刻まれます。